男性型脱毛症(AGA)の基礎的研究 (第2部) 育毛剤と遺伝子

フィナステリドとミノキシジルに対する反応性

フィナステリドとミノキシジルを用いた薄毛の治療で、両方の薬に、よく反応する特定の方々が、一部におられます。彼らは、薄毛の薬物治療だけで、十分満足できる頭髪の密度が得られる可能性が高い、幸運な方々です。フィナステリドとミノキシジルの相乗効果をお楽しみいただけることでしょう。

その他の多くの方々では、フィナステリドかミノキシジルのどちらかに、ある程度の反応がみられます。そのような方々では、この薬物治療で、頭頂部や中央部の頭髪密度などが増加することでしょう。
彼らも、薄毛に対する薬物治療へのレスポンダーです。育毛剤を続けることで、髪の濃さを維持できるでしょう。

薬物治療で、頭髪の濃さが増えない方々もおられます。このような方々では、育毛剤の有意な効果を確認できないという意味で、薬物治療に対する非応答者(ノン・レスポンダー)と思われがちです。
髪の密度は1年間かけてゆっくり増加するので、少しの増加では、自分でその変化に気が付かない場合も多いのです。

しかし、彼らでも、薬を使い続けることにより、自然経過による薄毛の進行を、ある程度、遅らせることができるでしょう。あるいは、髪の濃さが目に見えて増えなくても、育毛剤を使い続ければ、現状の髪の濃さを、維持できるでしょう。これらもまた、育毛剤が効いている結果だと言うのが、著者の意見です。
このように、自分はノン・レスポンダーと思っている方々でも、育毛剤による治療が有効に働いている場合があると、著者は考えています。

育毛剤が全く効かない、本当のノン・レスポンダーの数は、それほど多くないと、経験的に著者は思います。

育毛剤を使い続けることで、現状の頭髪の濃さをキープすることは,とても重要です。
現在の髪の濃さを維持することは、育毛剤による薄毛治療の、究極のゴールです。

育毛剤による治療は、自分にはあまり効かないと思っている方々でも、薬を使い続けていくことを、強くお勧めしたいと、著者は考えています。

育毛剤の効果

効果的な育毛薬を使って、髪の濃さを増やしましょう。

緑色の線の方々:

頭髪の密度に関しては、レスポンダーの方々では、育毛薬を使った治療の効果で、初期の1?2年間は髪の濃さが増え続けるでしょう。
育毛剤の効果が1~2年後にピークに達したあとは、その後、髪の濃さを維持する時期に変わります。
年齢とともに、髪の濃さは、わずかに減少していきますが、育毛剤を使い続けている間は、頭髪は、そこそこ、維持されていくでしょう。(緑色の線の経過) 

育毛剤の効果で、髪の密度が増加すれば、確かにうれしいですが、実は、それは最初の1-2年間だけです。たとえレスポンダーの方でも、育毛剤の治療で、永久に髪の濃さが増え続ける訳ではありません。
しかし、育毛剤を継続している限り、頭髪の濃さは、そこそこ、維持されるでしょう。生涯の時間の長さを考えると、この維持の期間が大部分なのです。

遺伝子で運命づけられた薄毛の進行は、誰にも止められません。どんなに有効な育毛剤を使っても、年齢とともに、髪は徐々に細くなります。しかし、育毛剤を継続して使用することによって、薄毛の進行を遅らせることはできます。このことが、重要なのです。

中には、育毛剤が効かなくなったと思い込んで、もっと強い育毛剤を求めて、他の薬を探し続ける方々もおられます。しかし、永久に髪を増やし続ける育毛剤は存在しません、

すなわち、育毛剤の使用初期に、髪の密度が増加する程度が大きくても小さくても、その後、長期間にわたって既存の髪の濃さをキープできることの方が、実は、重要なのです。現状の髪の濃さを維持することが、育毛剤による薄毛治療の究極の目標だと、著者は考えています。

黄色の線の方々:

育毛薬を使わなかったり、何らかの理由で薬の使用をやめたりすると、男性型脱毛症の自然の進行に従って、年齢とともに、頭髪は薄くなっていきます。
これは最悪のシナリオです。(黄色い線の経過)

年齢とともに、頭髪が細くなり、髪が薄くなってくことは、遺伝子で運命づけられた、自然の経過です。この薄毛化の進行は、誰にも止められません。

しかし、髪の薄毛化の自然な進行を、遅らせることはできます。それが、育毛薬の役割なのです。
日々の変化は小さくても、その積み重なりが続けば、長年の後に、大きな差になっていくでしょう。

高用量フィナステリドの効果
フィナステリドの用量については、どうでしょうか?

フィナステリド毎日1mgの内服治療に関して、レスポンダー(応答者)の割合は、著者の臨床経験では、人口の約40%でした。これらの方々では、フィナステリドの標準用量で、頭髪が濃くなります。

その他の、人口の約60%の方々では、毎日1mgのフィナステリドの内服では、髪の濃さは、主観的には、増加しませんでした。彼らは、通常量のフィナステリドに反応しない方々(ノン・レスポンダー)と考えられていました。

そこで、通常量の毎日1mgのフィナステリドの内服で頭髪が濃くならなかった10人の方々を集めて、毎日3.5mgのフィナステリドを1年間試してもらった経験が、著者はあります。

その結果は、どうだったでしょうか?
なんと、1年後には、10人のうち4人の方々で、頭髪の全体の濃さが明らかに濃くなりました。しかし、他の、10人中6人の方々では、頭髪の濃さは、ほとんど変化しませんでした。(筆者の未発表データ)

この結果から示唆されることは、次のようなことです。
つまり、フィナステリドの標準的な内服量を続けても、毛髪の濃さが増えなかった、いわゆる、ノン・レスポンダー(非応答者)と思われていた方々でも、そのうちの約40%の方々では、高用量のフィナステリドを内服することにより、頭髪が濃くなった、という事です。

通常量のレスポンダーと、高用量のレスポンダーを合わせると、人口の約64%(約2/3)の方々では、フィナステリドで髪が濃くなることになります。
また、高用量のフィナステリドを用いた薄毛治療でも、髪が濃くならなかった方々は、人口の約1/3だったと言うことになります。

前立腺肥大症で治療を受けている高齢者の患者さんたちは、毎日5mgのフィナステリドを飲むのが、通常の安全な治療量です。フィナステリドは、毎日5mgの内服でも、副作用の心配がない薬です。
したがって、若い人たちが、毎日2~3mgのフィナステリドを飲み続けても、安全で、副作用の心配はない、と言えるでしょう。

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