男性型脱毛症(AGA)の基礎的研究 (第1部) 性ホルモンと脱毛症

男性型脱毛症 (AGA)に関する基礎的研究 (第1部)
性ホルモンと脱毛症

男性ホルモンが原因で起こる脱毛症(男性型脱毛症、AGA)は、男性はもちろん、女性でも、最も主要な薄毛の原因となっています。
AGAは、いくつかの典型的な型の、薄毛状態になる特徴があることから、別名、「パターン脱毛」とも呼ばれています。

とくに、男性の脱毛症の診断は、容易です。
前頭部と頭頂部の薄毛の状態をみれば、その脱毛領域の典型的なパターンから、男性のAGAと、簡単に診断することができます。

それに対して、女性の薄毛の診断は、とてもむつかしいです。
女性の薄毛を起こす原因には、さまざまな疾患が含まれています。それらを、すべて、鑑別しなければなりません。
女性の薄毛の原因になる可能性がある病気を、ひとつひとつ検討して、原因を特定し、適切な治療を行うことは、容易ではありません。
高度な医学的知識と、様々な専門的な検査が、必要になります。
女性の薄毛の診断と治療に関しては、別の章で、詳しく解説することにいたします。

この章では、男性と女性の男性型脱毛症(AGA)(パターン脱毛)の、基礎的研究と治療に関する、最新の研究成果について、お話ししようと思います。

この記事のトピックは、AGAの病因、遺伝的要因、男性ホルモン(アンドロゲン)、5アルファ-還元酵素(5α-レダクターゼ)、ジヒドロテストステロン(DHT)、および男性ホルモン受容体に関する、最近の知識などを含んでいます。

読者の皆様が、この章で、AGAに関する基礎的研究の、最新の知識を得られるように、解説してみたいと思います。

医療で治せる男性型脱毛症
AGAとは何か?

男性と女性にみられる、AGAによる薄毛の特徴は、「頭髪の進行性の細毛化(ミニチュア化)」、「終毛(正常の太さの髪)の数の減少」、および「頭髪の直径の大小の不均一性」などです。

遺伝的にプログラムされた、毛包の細毛化がAGAの本質ですが、その正確なメカニズムは、まだ十分には解明されていません。

ジヒドロテストステロン(DHT)は、AGAで髪の直径が細くなる、細毛化の重要な原因になっています。

AGAは、「非瘢痕性の組織学的変化によって引き起こされる脱毛症」と定義されます。
非瘢痕性とは、AGAの薄毛は可逆的であり、適切に治療されれば、治る可能性がある、ということを意味しています。

男性と女性の性ホルモン
はじめに

性ホルモンは、AGAで重要な役割を果たしています。
男性ホルモンと女性ホルモンは、ステロイド・ホルモン・ファミリーに属しています。

ステロイド経路には、アンドロゲンの合成および相互変換の、絶妙なメカニズムがあります。

男性ホルモンは、ステロイド経路内で、分子構造がわずかに変化するだけで、女性ホルモンに変化します。その逆も、また同様です。
つまり、これは、男性ホルモンと女性ホルモンが、同じ代謝経路内で、互いに変化することを意味しています。

しかし、性ホルモンの役割は、AGAの病因に関して、それぞれ、まったく異なっています。
様々な男性と女性の性ホルモンは、脱毛の進行にプラスとマイナスの影響を与えます。

この章では、男性と女性のAGAの脱毛症における、性ホルモンの関与を、理解することが目的です。

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