男性型脱毛症(AGA)の基礎的研究 (第1部) 性ホルモンと脱毛症

エストロゲン

エストロゲンは、3種類のステロイドホルモンで、構成されています。それらはエストロン、エストラジオール、およびエストリオールです。

エストロゲンは、間接的な抗アンドロゲン剤です。すまわち、エストロゲンは、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)を増加させ、血中に循環する生理活性のある遊離テストステロンを減少させます。
また、視床下部からの、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)の分泌を減少させ、精巣や卵巣での、アンドロゲン合成を抑制します。

エストロゲンは、5α-還元酵素を弱く阻害します。

血中のエストロゲン濃度の低下は、女性型脱毛症、あるいは女性の男性型脱毛症(FAGA)の発症に、何らかの役割を果たしている可能性があります。

内服および外用のエストロゲンによる治療は、既存の頭髪を維持し、AGAの進行を抑制するのに有用かもしれませんが、頭髪の太い終毛を再成長させるほど顕著な効果はないようです。

外用エストロゲンの局所使用に関しては、エストロゲンの約30%が効果的に働き、脱毛患者の休止期の頭髪の数を減らすことが報告されていますが、使用したエストロゲンの70%以上は、非アンドロゲン性物質に代謝されていました。

他方では、エストロゲンが、マウスの毛の発育を抑制し、エストロゲンが成長期を短縮し、退行期の早期発症を引き起こしたという報告もあります。
エストロゲン受容体の拮抗薬は、休止期を成長期に誘導し、毛の発育を開始しました。

頭髪の毛包に対する、エストロゲンの作用の特性は、まだ完全には理解されていません。
このプロセスには、いくつかの異なる要因が関係している可能性があります。

妊娠中の太い髪と出産後の脱毛

妊娠中の頭髪では、成長期の毛包の数が増加します。

妊娠は成長期の持続期間を延長し、成長期から退行期への移行を阻害します。これが、妊娠中に髪の濃さが増加するメカニズムです。

逆に、出産後の頭髪では、多数の毛包が、正常の毛周期に戻るので、延長した成長期が、いっせいに退行期に変わり、その後、休止期に入ります。

分娩後の脱毛の本質は、休止期脱毛です。その結果、出産後約3ヶ月以内に抜け毛がどっと増加するので、頭髪が薄くなります。

それは「妊娠による休止期脱毛」あるいは「出産後の休止期脱毛」として知られています。

出産後の休止期脱毛

女性は、妊娠中に、髪が太くなり、毛量がゆっくり増加しますが、多くの女性は、髪が濃くなったことに気づきません。

しかし、出産後には、最初の数ヶ月の短期間に、大量の髪が抜けるので、多くの女性は、パニックに陥ります。

その後、髪の濃さは、1年以内に妊娠前のレベルに戻ります。ただし、それは、女性が男性型脱毛症(AGA)の体質を、潜在的に持っていない場合の話です。

もともと、AGAの遺伝的素因がある女性では、出産後の脱毛が残って、もとの髪の濃さまで回復しない可能性があります。つまり、頭髪の薄毛が改善せず、女性型脱毛症のパターンのまま、その後も薄毛が持続する可能性があるのです。

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