男性型脱毛症(AGA)の基礎的研究 (第1部) 性ホルモンと脱毛症

主要なアンドロゲンの相対的な効力および受容体親和性

標的組織におけるアンドロゲンの作用は、分子構造の相対的な効力、およびアンドロゲン受容体への結合親和性、によって決定されます。

主要なアンドロゲンの相対的効力および受容体親和性は以下の通りです。

DHEA < アンドロステンジオン < テストステロン < DHT 19炭素アンドロゲン構造では、アンドロゲン受容体に結合するために、17-OH基が必要です。 多くの種類のアンドロゲンの中で、DHTは、最も強力な内因性アンドロゲンです。 酵素の一種である5α-還元酵素は、組織内で、テストステロンをDHTに変換するために必要です。 皮膚、前立腺および肝臓などの、アンドロゲンの標的組織では、細胞内に5α-還元酵素を含んでいます。 毛包細胞における局所的な細胞内DHTは、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオンおよびテストステロンなどの、循環アンドロゲン前駆体から産生されます。 DHTはアンドロゲン受容体に結合し、標的組織内で、局所的に作用します。これは、細胞内のアンドロゲン作用を増幅する、局所的なメカニズムです。 この仕組み、つまり、標的組織内でDHTが局所的に合成されることは、AGAの臨床で、重要と考えられています。 DHTは血液中にも存在します。血液中を循環するDHTは、肝臓で産生されて、全身に供給されていると考えられています。 AGAにおける、DHTの主な作用では、毛包細胞で局所的に合成されるDHTの作用が、主要なものと考えられています。 いずれにせよ、組織内で局所的に産生されたDHTと、循環している血清中のDHTの両方が、男性型脱毛症において重要な役割を果たしている可能性があると、考えられています。

アンドロゲンと体毛の濃さ

アンドロゲンは、男性型脱毛症の患者における、頭髪の薄毛の主な原因です。
他方では、同じホルモンが、胸毛・脇毛・陰毛・ひげの濃さを増加させます。

アンドロゲンの臨床効果は、身体の異なる場所で、異なっています。体毛に対するアンドロゲンの影響は、体のどこでも同じではありません。

女性では、低濃度の血中アンドロゲンで、脇毛および陰毛が成長します。
しかし、男性では、体毛・手足の毛・陰毛・ひげを成長させるためには、高濃度の血中アンドロゲンが必要です。

アンドロゲン受容体の感受性には、男性と女性の間で、違いがあります。

アンドロゲンの血清濃度は、通常、思春期以降の、男性型脱毛症の初期の段階では、高くありません。
アンドロゲン血中濃度は、男性型脱毛症(AGA)の早期の進行と、直接には、関係していません。

それでは、AGAの脱毛症では、何が原因で、個人差ができるのでしょう? 

ジヒドロテストステロン(DHT)の存在と、アンドロゲン受容体の感受性に個人差があることが、男性と女性のAGAの進行に、重要な役割を果たしています。

アンドロゲンの血清中濃度だけでなく、アンドロゲン受容体の感受性の個人差や、5α-還元酵素・ DHTなどの要因も、頭頂部の薄毛や、前頭部の生え際や左右M字部分の後退など、男性型脱毛の典型的な症状の発現に、関与しています。

ステロイドホルモンとアンドロゲン受容体の結合親和性

男性と女性の性ホルモンは、同じステロイド経路によって、コレステロールから合成されます.

血液中を循環しているアンドロゲン前駆体は、形質膜を透過して細胞内に拡散し、血液から毛包細胞に入ります。
それらは毛包細胞内で、ジヒドロテストステロン(DHT)に変化します。

DHTは、最も強力な細胞内アンドロゲンです。

DHTは毛包細胞で産生され、アンドロゲン標的領域の、毛根鞘細胞の核の中にあるアンドロゲン受容体に結合します。

アンドロゲン受容体は、X染色体の長腕にX結合しています。

様々なステロイドホルモンと、アンドロゲン受容体の結合の親和性の強さは、次のような順番になっています。

プロゲステロン < エストロゲン < テストステロン < DHT テストステロンとDHTは同じ受容体に結合しますが、生理学的役割は異なっています。 女性のAGAの症状は、一部の特定の患者では、アンドロゲン受容体とは無関係に発症する場合もあります。

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