育毛剤「minoxidil」の初期脱毛

ミノキシジル

今日は、育毛剤の「ミノキシジルによる初期脱毛」のお話をしましょう。

世界の育毛剤の中で、医学的にその効果が認められているのは、フィナステリドやデュタステリドと、ミノキシジルの2種類だけです。フィナステリドとデュタステリドは、毛根の細胞にある5α還元酵素を阻害することで育毛効果を発揮する薬です。ミノキシジルは毛根の細胞を元気にする薬です。それぞれ薬理的な作用機序が違うので、両方を併用すると相乗効果があります。このフィナステリドとミノキシジルの2剤を併用する方法が、医療的にスタンダードな育毛法として世界で推奨されています。

ミノキシジルは頭皮に塗る溶液のタイプの薬で、気軽に使えるので、世界で最も普及している育毛剤の一つです。

毛周期 (ヘア・サイクル)


今日のお話の内容を理解するためには、まず、毛周期の仕組みを理解することが必要です。
頭に生えている毛髪は、いつも同じ髪ではなく、常に新しい髪が生え替わっています。成長して長く伸びた髪は、成長が止まった後、やがて抜けて、また次の世代の髪が生えてきます。この周期的な繰り返しを毛周期(ヘア・サイクル)といいます。

毛周期の中で、健康な髪が育って太く長い髪に成長する時期を成長期(4~7年間あるいは3~10年間)といいます。その後、退行期(約2~3週間)に髪は伸びることを止めて、毛根が短縮します。それに続いて、休止期(3~4ケ月間)から、替毛期(数週間~数ケ月)をへて、また次の成長期が始まります。こうして、規則正しい周期を繰り返しながら、新しい髪に生え替わっています。

黄色人種の頭髪の総数は約8~12万本で、正常の頭髪では、約90%が成長期と退行期です。残りの約10%が休止期と替毛期の髪です。そして、毎日平均約100本(50~150本)以下の髪が抜けて、新しく生え替わっています。この程度の本数の髪が、洗髪やブラッシングで抜けたり、抜け毛になって枕に落ちていても、それが原因で薄毛が進行することはありません。これは健康な髪の生え替わりによる、自然な抜け毛です。

ところで、毛周期のなかで、成長期が終わると髪は伸びるのを止めますが、その後すぐに髪が抜けるわけではありません。休止期・替毛期のあいだに、一部の髪は抜け始めますが、多くの毛穴では成長が止まった太くて長い髪がまだ残っています。この髪が抜けるのは、次の成長期が始まって、下から次の世代の新しい髪が生えてきたときです。下から伸びてきた次世代の髪によって、古い髪が押し出されて抜けるのです。
幼児の乳歯は、下から永久歯が生えてきたときに、乳歯が押し出されて抜けるのと似ています。

ヒトの頭髪では毛周期はお互いにずれているので、正常の頭髪は全体でバラバラに新しい髪に生え替わり、1日の抜け毛の数はほぼ一定しています。
もし髪の毛周期が、全部の髪で同期していたら、ある時期にいっせいに髪が抜けて薄毛になり、しばらくするとまた髪が濃く生えてくることを、周期的に繰り返すはずですが、実際にはそうはなりません。

多くの哺乳類の動物では、春と秋にいっせいに、夏用の毛と冬用の毛に生えかわります。
ヒトでも春や秋に抜け毛が若干増えることはありますが、1年を通じて、平均的に髪が生え変わるので、頭髪の濃さはいつもほぼ一定に保たれています。

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