健康長寿、老化の予防(第1部) 健康寿命を延ばそう

老化には2段の下り段差

まとめ

老化では、44歳と60歳に大きな変化が起きます。

解説

研究 その2

さらに、米国スタンフォード大学の2024年の研究では、ヒトの体では、とくに44歳と60歳の2回の年齢で、体の細胞の中に、加齢による分子の急激な変化が起きることが示されました。(2024 Nature Aging)

これらの歳で、体が機能不全に陥る生体分子の変化が起こるというのです。 そして、ヒトの遺伝子と腸内細菌叢に変化がみられるというのです。

この研究では、血液や皮膚や腸内細菌叢のRNAやタンパク質の変化を調べました。

その結果、44歳前後で、心臓血管病が増え始め、アルコール代謝や、脂質代謝酵素の機能が低下し、腸内細菌叢が変化して悪玉菌が増加していました。

免疫機能・腎機能・酸化ストレス・炭水化物の代謝に関わる分子に変化がみられ、体細胞の老化が進みました。

その結果、心臓や血管の病気や、アルコールや脂肪の代謝に変化が現れたのです。

さらに、60歳前後で、免疫調節、酸化ストレス、腎機能、炭水化物の代謝などが変化しました。

そして、筋力低下(サルコペニア)がすすみ、心血管系の病気や、腎臓病、2型糖尿病のリスクが高くなりました。

このように、ヒトが歳を取る過程では、44歳・60歳の2つの年齢が、体に大きな加齢変化が起きる歳でした。

ちなみに肌荒れも含めて、40代と60代でお肌の老化も加速する傾向があるようです。

(参考文献)

Shen X, Snyder M.P., et al. Nature Aging, Aug 14, 2024. DOI: org/10.1038/ s43587-024-00692-2.

老化は3段の下り段差

まとめ

前の項目でご紹介した2つの医学論文を総合してみましょう。

加齢変化の進行では、人生で3つの、下りの段差があるようです。

体力が急激に衰えるのは、40歳前後(34歳~44歳)、60歳前後、80歳前後(78歳~80歳)の3つの崖です。

解説

前述の2つの研究結果を総合すると、ヒトの老化は、生涯で3回の時期に、急激に体力が衰えて、老化が進む傾向があるようです。

人生の3つの下り階段、あるいは3つの崖。 それは、個人差による多少の前後のズレも考慮して、つぎの3つの年齢と覚えましょう。

40歳前後(34歳~44歳)、

60歳前後、

80歳前後(78歳~80歳)

第1の階段

最初の下り階段は、30代後半~40代前半の頃です。 この頃は、まだ若いので、通常の生活では、体力の衰えの変化に気が付きにくいです。

しかし、限界を超えて肉体を酷使して活躍する、世界的アスリートたちが、体力の限界を感じて、現役を引退する時期が、この年齢の前後になります。

第2の階段

第2の下り階段は60歳前後です。 一般人の生活では、60歳前後に、体力の衰えを自覚し始めます。

腸内細菌叢が悪化して、血液中のタンパク質の組成が変化してきます。

動脈硬化や、骨粗鬆症が進行して、肉体的に無理がきかなくなり、物忘れ、心臓血管病などの加齢変化が始まります。

筋力低下、腎機能低下、肥満、2型糖尿病などの加齢変化も増えてきます。

第3の階段

第3の下り階段は80歳前後です。

ヒトは、80歳前後から、肉体的な衰えに伴って、物忘れ老化がすすみ、認知症が始まることは、多くの人々にとって、避けられない運命です。

これらの3回の下り段は、年齢が進むとともに、段差が大きくなる傾向があります。

第3回目の段差は、それまでの段差より大きく、肉体的な体力の衰えや物忘れが、ひどくなる歳です。

第4の崖

これらの研究では、対象者が75~95歳までに限られていたので、それ以上の年齢の、超高齢者のデータはありません。

今後、ヒトが長生きするようになれば、対象者の年齢が90歳~100歳代の年齢になった時点で、さらに第4の崖が見つかるかも知れません。

筆者の経験では、95~97歳から103歳の頃に、第4の崖があるようです

95歳以降になると、1~2年ごとの短期間で、別人のように体力が衰えます。 それまで自力歩行できていた人に、しばらくぶりに会うと、歩けなくなって寝たきりになっていたりします。

在宅の超高齢の患者さんたちの訪問診療を長年行ってきた筆者の経験では、どんな状態の超高齢者にも「103歳の壁」があり、それを乗り越えて長生する人はごくまれです。

この103歳の壁はとても深い崖です。 人生で最後の崖になります。

40歳、60歳、80歳の3回の衰えについては、誰もが皆、何かしら思い当たる節があるものです。

個人差によって数年の前後差はあるでしょうが、皆さんご自身の体験として、何かしら心当たりがあり、合点がいくと思います。

(参考文献)

1. Lehallier B, Wyss-Coray T, et al. Nature Med 25; 1843-1850, 2019.

2. Shen X, Snyder M.P., et al. Nature Aging, Aug 14, 2024. DOI: org/10.1038/ s43587-024-00692-2.

健康長寿、老化の予防(第1部)

(以上、文責 柳生)

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